製薬会社は今後どうなるのかー将来性について考えてみますー




今回は製薬会社の将来性について書いていきます。

現在新薬の開発が難しい関係で製薬会社の経営が厳しい状況であるということはご存知の方も多いと思います。

1.なぜ経営が厳しいのか

これにはいくつかの理由が考えらます。

製薬会社の経営が厳しい理由

  • 新薬を出しにくい
  • 後発品の使用が促進されている
  • 長期収載品目の売り上げに頼っている

僕の考えではこんなところです。

一つ一つ解説していきます。

1-1.新薬を出しにくい

そもそも新薬を開発すること自体が難しいのです。

理由は市場に有効な薬がすでに多く出回っているため、これからの新薬に求められることが以前よりも多くなってきているからです。

優れた薬剤を開発することの難易度が以前よりも上がっているため新薬の発売が厳しい状況になっています。

具体的に書くとこれから発売される新薬には既存品で解決できない新しい効果があったり、既存品よりも副作用が少ないなどの特徴がないと新薬とはいえ、なかなか医者に受け入れてもらえません。

もっと細かく書くと効果、副作用、アドヒアランス、剤型などを中心に既存品よりも画期的な部分がないと厳しいですね。

治療満足度が高く、治療に対する薬剤の貢献度が高い薬が多い領域ではこれ以上新薬を開発する必要はあまりありません。

具体的には消化性潰瘍、脂質異常症、糖尿病、高血圧などの疾患は今ある薬剤でほぼ十分と言われています。

これらの領域で画期的な新薬を開発するのは至難の業です。(理由はもうある程度間に合っているからです。)

逆に治療満足度が低く、治療に対する薬剤の貢献度が低い薬が多い領域(アンメットメディカルニーズ)では新薬の開発が必要とされています。

ただ、これらは病態が複雑だったり、発現機序が正確に解明されていなかったりとまだまだ未知のことが多いので有効な薬剤を開発することがそもそも難しいです。

また原因を突き止めたとしてもそれを治療する方法がなかなか見つからないケースもあります。

だから現在でも研究開発が行われています。

新薬の開発が待ち望まれている疾患の薬を発売すればあっという間に普及します。

その中でも最初に発売した薬はやはり売れます。(糖尿病治療薬であるDPP4阻害薬のジャヌビア・グラクティブがいい例です

今まで有効な薬が少なかった疾患の新薬(画期的な新薬に限る)が出た場合は爆発的に売れます。

そして似たような薬がその後発売されますが、やはり明確な差別化のポイントがないと最初に出た薬が多く使われます。

(DPP4阻害薬は次々と各社が発売しましたが、結局排泄経路や服薬回数くらいしか主な差別化ポイントがなく苦戦していました。)

それだけ最初に出すということは大きなアドバンテージになります。

最初に発売された薬はデータの量も多いし、使う先生も多いので、トレンドにもなります。

トレンドになった薬はどんどん普及していきます。

この牙城を崩すのはなかなか厳しいですよね。

これは僕の経験からも最初に出た薬が売れることは間違いないと言えます。

繰り返しになりますが、それなりに期待されていた新薬に限りますけどね。

(糖尿病の薬であるSGLT2阻害薬は新しい作用機序の薬でしたが、DPP4阻害薬がすでに発売されており、しかもかなり評価されていたのでそこまで爆発的には売れませんでした。)

ゆえに、新薬を開発する難しさが以前よりも上がっていることから新薬が出にくい状況になっております。

まとめ

  • すでに有効な薬が市場に多く出回っている
  • 画期的な要素がないと新薬として発売しても厳しい
  • 求められる薬剤の期待度が以前よりも高くなっている

1-2.後発品の使用が促進されている

これは国の方針で「2020年9月までに後発品の使用率を80%まで上げる」という目標が掲げられています。

(詳しくは厚生労働省のホームページを参照してください。)

後発品は価格が安く先発品と同等の効果を発揮するので医療費の削減には必要不可欠なものです。

海外では後発品が出た瞬間にほとんど後発品へ移行します。

日本は後発品への移行が遅い方の国です。

また診療報酬の観点からみても後発品を使えば薬局や医療機関にメリットがあるようになってきています。(外来後発医薬品体制加算)

だから後発品を使わない方がデメリットが大きい時代になってきています。

国の政策ですのでMRがどうこうできる問題ではありません。

後発品に変わるのは仕方のないことです。

という変わらないと医療費がどんどん膨れ上がります。

1-3.長期収載品目の売り上げに頼っている

先発メーカーであれば新薬を継続的に開発しなければ利益の確保が難しくなります。

ただ、新薬の開発は厳しい状況にあるので実際には特許が切れた薬剤である長期収載品目が会社の利益の大半を占めている製薬会社もあります。

長期収載品目は薬価がとても低いしこれからもどんどん低くなります。

さらに特許が切れているため徐々に後発品に変わっていきます。

だから今後、利益が減ることはあっても増えることはまずありません。

売り上げの内訳で長期収載品目の割合が大きい製薬会社も意外と多く存在します。

薬の特許はいずれ切れるので継続的に新薬を出していかないと先発メーカーは利益を確保することが難しくなってきます。

これが現在起きている現象です。

そこで新薬が出ないメーカーはジェネリック医薬品を扱ったりするわけですね。

ただ、新薬メーカーが中途半端にジェネリックを扱ったとしてもそこまでは利益を確保できません。

後発品を専門に扱うメーカーもありますので競争は厳しいです。

まとめると新薬が出ない先発メーカーの将来性は黄色信号ということです。

もちろん自社開発品がなくても導入するという手がありますので、新薬を出すことはできます。

ただ、導入品というのはすでにある薬剤を導入することしかできないため会社の方向性と合うような製品があればいいですが、ないことも考えられます。

補足
導入品目は利益率が低いのも特徴です。

利益率が高いのは自社開発品です。

実際に、会社の存続のため自社が強くない領域の薬剤を導入するようなケースも多くあります。

これはMRにとってはかなり大変なことです。

新しい領域に参入すると製品の勉強はもちろんですが新たに疾患の勉強もしなければなりません。

また、新しく訪問する医療機関も増えるため、訪問ルールの把握や信頼関係の構築も合わせてやらなければなりません。

現在の訪問施設にプラスでこれらの仕事をこなさなければいけないのでかなり大変です。

だから、同じ領域の薬を出し続けた方がMRにとっては働きやすいですね。

スペシャリティーファーマの強み

2017.09.27

まとめると、長期収載品目の占める割合を減らして、新薬の割合を増やして利益を拡大していくことが製薬会社にとっては理想の展開となります。

2.経営が厳しくなった場合はどうするのか

会社ですのですぐに経営は厳しくはなりません。

しかし、厳しくなるタイミングはあります。

それは

  • 主力製品の特許切れ
  • 期待された新薬の売り上げ

を見れば大体わかります。

主力製品の特許切れ
主力製品というのは会社の売り上げの核となる製品のことです。

この主力製品の特許が切れると会社の売り上げは大幅に落ちます。

(例)エーザイのアリセプト

期待された新薬の売り上げ
期待された新薬というのは製薬会社が発売前に売れると見込んだ製品のことです。

開発段階でおおよその売り上げは予想できます。

あとはそのシミュレーション通りに売れるかどうかですが、思った程売り上げが伸びないということも実際にあります。

(例)SGLT2阻害薬は海外では結構売れているが日本では苦戦

まず、薬というのは

❶一つの施設で多く処方される薬

❷幅広い施設で処方される薬

があります。

一つの施設で多く処方される薬剤は後発品に一括で切り替えられた場合、売り上げがガクッと下がります。

それに対して幅広い施設で処方されている薬剤に関しては少しずつ後発品に切り替わっていくため売り上げは緩やかに下がっていきます。

どの製薬会社にも主力製品は必ずあり、この主力製品の特許切れというのは製薬会社にとっては大きなイベントです。(パテントクリフってやつです)

特許が切れた場合売り上げは落ちるので、それを補う他の製品がないと利益の確保は難しくなります。

具体的には

  • 有望な新薬を出す
  • 既存品の売り上げを上げる

のいずれかの対策をしないと利益の維持は難しくなります。

そして利益の維持が難しくなった場合は

  • MRの数を減らして規模を縮小する
  • 製薬会社同士で合併する
  • 他の製薬会社に吸収される

などの対策をしないと事業を存続できなくなってしまいます。

ただ、既存の医薬品を供給しなければならないので、潰れるということは考えにくいです。

だから事業を残したまま経営する状態が変わることが推測されます。

過去にも合併や吸収は多く行われてきました。

有名なところだとアステラス製薬は山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してできた会社ですし、ファイザーは多くの製薬会社を吸収しています。

また、ある事業を手放すというやり方もあります。

例えば、「〇〇領域を手放す」といったような形です。

味の素製薬とエーザイの消化器事業から生まれたEAファーマがこれに近いです。

そして、これら全てに言えることは確実に人員削減があるということです。

そうでないと合併するメリットがあまりないですからね。

一人当たりの生産性が増すように合併するわけです。

結論としては経営が厳しくなった場合

  • 医薬品の供給は維持されること
  • 社員は減る

上記の2点は間違いないと僕は考えてます。

実際にいくつかの製薬会社で早期退職が実施されています。

3.薬価改定の影響について

薬価改定のルールが変わってきているのでこちらにも触れておきます。

簡単に言ってしまうと以前より薬価が下がりやすくなったということです。

一般的なメーカーであれば自社製品の値段は自社で決めるのが普通ですが、製薬会社の場合薬の値段(薬価)を自社で決めることはできません。

誰が決めるのかというと国です。

国が一方的に決めます。

そもそも物を作って売るメーカーの利益は物を売ることでしか確保できません。

だから、値段ってめちゃくちゃ大事です。

それを国にコントロールされてしまうので、「この値段でもう少し売りたい」と製薬会社が思ったとしても「国がダメですよ」と言えばそれで終わりです。

そこで、なぜ国が値段を決めているのかとうと補助しているからです。

風邪をひいたりして病院に行き保険証を出すと実際の3割の価格で診察を受けることができます。

残りの7割は国が負担しています。

しかも現在の日本は高齢者社会なので、医療費というのがかなり大きくなっています。

だから、薬の値段を下げることと後発品の使用を促進することによって医療費の削減に力を入れています。

後発品が出ていない薬剤は値段を下げることしか国としては対策できないので、予想より売れた薬は値段を下げますというのが国の方針です。

(例:小野薬品のオプジーボ)

4.まとめ

製薬会社は医薬品という絶対的なニーズがある製品を開発、販売してますので、比較的安定な会社です。ただ先発メーカーが存続していくためには新薬を開発し続けるしかないので厳しさは今後増すと思われます。

続きを書きました。

製薬会社の将来性は会社によって違います

2019.05.12




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