製薬会社がMRの早期退職を実施する理由を考えてみました




最近では製薬会社の早期退職(希望退職)は珍しいものではなくなりつつあります。

 

そこで「早期退職はどんな目的でなぜ行われるのか」と疑問に思っている方もいらっしゃると思います。

 

今回は製薬会社の早期退職に関して僕の意見を書いていきたいと思います。

過去に早期退職を実施した製薬会社

各社のホームページを参考に調べてみると以下の通りです。

 

  • 武田薬品
  • 第一三共
  • アステラス製薬
  • 中外製薬
  • 田辺三菱製薬
  • 住友ファーマ
  • エーザイ
  • 協和キリン
  • 鳥居薬品
  • 日本ケミファ
  • サノフィ
  • ベーリンガー
  • MSD
  • アストラゼネカ
  • イーライリリー
  • バイエル薬品
  • ファイザー
  • ノバルティス
  • トーアエイヨー
  • 塩野義製薬
  • 参天製薬
  • 大正製薬HD
  • ヤンセンファーマ

漏れがありましたら申し訳ございません。

 

こんな感じで名だたる大手製薬会社が早期退職を実施しています。

 

概要(人数、実施理由、対象者など)は製薬会社によって違いましたし非公開の製薬会社もありました。

 

ただ早期退職の対象年齢は大体45歳前後のところが多かったです。

早期退職を実施する理由について

早期退職を実施する理由を調べてみました。

  • 合併に伴う人員削減
  • 業績悪化に伴う規模の縮小
  • スペシャリティ領域への移行に伴う人員削減
  • 組織の活性化
  • MR活動の制限に伴う人員削減

主な理由は上記の通りです。ひとつずつ解説していきます。

合併に伴う人員削減

製薬会社同士の合併もしく吸収が起きると人員削減が起きやすいです。この理由を予想してみたいと思います。

 

合併や吸収を行うと従業員の数がどうしても増えてしまいます。ただ実際にはそんなに従業員の数は必要ない可能性が高いです。ですので早期退職が実施されるのではないでしょうか。

 

ちなみに合併することによる人員削減はできないようです。ですので合併から少し経った後に早期退職が行われることが多いです。

業績悪化に伴う規模の縮小

主力製品の特許切れによって製薬会社の業績が悪化することは珍しくありません。業績が悪化すれば製薬会社は規模を縮小する方向に動いていきます。その結果早期退職が行われることになります。

 

ただ売上好調の製薬会社も早期退職を実施しているので業績がいいから早期退職がないとは言えないですね。

スペシャリティ領域への移行に伴う人員削減

製薬会社によってはメインで扱う領域がプライマリー領域からスペシャリティ領域へ移行しているところもあります。

 

プライマリー領域の薬は主に開業医がメインターゲットであるのに対してスペシャリティ領域の薬は主に病院がメインターゲットであることが多いです。

 

病院の数は開業医よりも少ないのでMRの数も以前より少ない人数で対応することができます。

 

また売り方も「頻回訪問によるコール数や付き合い(人間関係)」というよりも「量より質の情報提供をすることによって」にシフトしていますので以前よりMRの数が少なくても問題ない可能性が高くなっています。

 

以上の理由から方向性が変わっている製薬会社は早期退職を実施したことが考えられます。

組織の活性化

売れるMRもいれば売れないMRもいます。

 

製薬業界は以前よりも厳しい状況になっていますので製薬会社は生産性の低いMRを減らしたいという思いがあると思います。

 

表上には出てきませんが製薬会社はMRを確実に選別していると思います。

 

早期退職の対象は表上では勤務年数〇〇年以上の〇〇歳以上の全社員が対象とかになっていますがおそらく会社に残って欲しくないMRに早期退職を強く勧めて会社に残って欲しいMRは引き留めるという裏の事情があると思います。

 

MRの雇用はプロ野球の雇用に寄ってきているのかなと思います。安定雇用というよりはむしろ実力雇用に近くなっています。結果が出ないのであれば辞めてほしいみたいな感じですね。

 

また早期退職を実施した後に新卒採用や中途採用をしている製薬会社もあります。

 

まとめると製薬会社は生産性が低いMRに辞めて頂き将来性のある若い人や会社が欲しい条件を満たしたMRを採用したいと思っているということが推測できます。

MR活動の制限に伴う人員削減

以前よりもMR活動の幅は制限されておりMRができることは着実に少なくなっています。また様々な理由からMRと面会しない医療機関も増えました。

 

これらの理由により以前よりも少ないMR数で対応することが可能になったということも早期退職の実施につながっていると考えられます。

製薬業界は厳しくなっている

早期退職の実施の背景には製薬業界の厳しさがあります。今後、今と同じかそれ以上の利益の確保は難しいと考えている製薬会社は少なくないと思います。

 

この理由は色々ありますが新薬を出す難易度が上がっていることと爆発的に売れる可能性がある薬が少ないことが考えられます。

 

従って製薬会社はできる限り資金を貯蓄しておきたいという狙いがあると思います。

 

薬の開発には莫大な資金が必要になるので利益が確保できる時に目一杯確保しておきたいという考えには納得できます。

 

当たり前ですが資金を確保するためにはお金を稼ぐのも大事になりますが支出を減らすことも大事です。

 

企業ならなおさらこの支出を減らすことでかなり多くの資金を蓄えることができます。

 

支出を減らすとなった場合真っ先に対象になるのが生産性が低い高給の社員です。

 

生産性が低いのに給料が高い社員に早期退職として辞めて頂ければ会社としては支出を減らすことが可能になります。

 

しかも利益の確保が難しくなると退職金を上乗せして退職を勧める早期退職を実施することが困難になります。

 

だからある程度資金があるうちに実際しているのだと思います。

早期退職の対象年齢について

これも調べていると早期退職の対象年齢は大体45歳前後である製薬会社が多かったです。

 

早期退職の年齢に関しては完全なる僕の偏見による意見になってしまうことだけはご了承ください。

 

MRで45歳という年齢は管理職にもなれる年齢です。具体的には営業所の所長です。エリートMRならば30代後半から40代前半でも所長になることができます。

 

また営業所長のポジションには限りがあります。基本的には1営業所につき1人です。だから社内での所長になるための競争は激しいです。

 

そこで「誰もが年齢に応じて所長になることができるのか」といえばそんなこともありません。

 

結果をしっかり残した人でないと所長になることはできません。

 

従って45歳で管理職になれていない人は基本的に結果をそこまで出していない人が多いです。(結果を出していても管理職になることを望まないMRもいますのでそのような例は除きます)

 

結果をそこまで出していなくても年功序列の場合会社としてはある程度高い給料をその社員に払わなければなりません。

 

そうすると仕事量に見合っていないくらい高い給料を会社は支払うことになります。だから早期退職の対象年齢が45歳前後であると僕は思っています。

 

しかも大して仕事をしていない社員の代わりにやる気のある若い社員がそのエリアをまわった方が会社としても売り上げを上げられる可能性が高くなるのでいいですよね。

 

もちろん会社にとって必要な存在であれば管理職になっていなくても早期退職の対象になる可能性は低いです。

 

(稀にマネージメントがうまくなくプレイヤーに戻ってしまうことはある。その場合でもプレイヤーとしては評価されているので会社にとっては必要な存在といえる。)

 

僕がMRをやっている時も最低限の仕事しかやらなくて高い給料をもらっているベテランMRの方は一定数いました。

 

しかも所長もベテランMRにはあまり口出しすることができず対応しにくい存在であることも肌で感じていました。

早期退職の実施によりMR数は減少

2013年度のMR数は過去最高の65752人でした。ここから少しずつ減少していき2021年度のMR数は51848人になりました。MR数は2013年度から2021年度の間で13904人減少でした。(約20%の減少)

参考:2022年度MR白書より

こんな感じで業界全体で見ればMR数は減少しています。ただMR数の推移は製薬会社によってかなり違います。

まとめ

早期退職の実施は会社の利益のためだけではないと僕は思っています。製薬会社が生き残るための組織改革の一つではないでしょうか。




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