現役MRの中には「最近MR不要論という言葉をよく聞くがイマイチ納得いかない」と思っている方もいらっしゃると思います。
そこで今回はMR不要論について偏見強めの個人的な意見を書きました。
Contents
MR不要論とは
その名の通り「MRは不要ではないか」ということです。
そこでなぜこのようなことが言われてしまうのかというと「MRがいなくても困らないしMRなんてそもそも必要ない」という考え方があるからです。
MRは本当に必要ないのか
これに対する答えは「必要な時もあれば必要ではない時もある」が一番正解に近いのではないでしょうか。
また必要かどうかを判断する機関が「製薬会社なのか医療機関なのか」でも変わってきます。
製薬会社がMRに期待すること
まず製薬会社がMRを必要とする理由について書いていきます。
製薬会社がMRに期待することは以下の通りです。
- 売り上げを伸ばすこと
- 情報収集をすること
- 情報提供をすること
主にこの3つですね。
売り上げを伸ばすこと
どんな美味しいお店でもその存在が知られなければ売り上げは上がりませんしどんなに面白いアニメでもその存在が知られなければみられません。
このようにいい商品だからといって勝手に売れるわけではありません。売れるには皆さんにその存在を認知してもらう必要があります。
そしてこの理論は医薬品にも適用できます。
いい薬を開発したからといって勝手に売れるわけではありません。だから製薬会社は自社製品を宣伝するためにMRを雇用しているわけです。
従って薬の売り上げを伸ばすためにも製薬会社はMRを必要としています。
実際にMRが薬をPRすることによって薬の売り上げは伸びるわけですから製薬会社にとってMRはなくてはならない存在です。
しかも医薬品はテレビCMで宣伝できないのでMRに薬の宣伝をしてもらうことは貴重な宣伝方法です。
特に競合品と効果がほとんど変わらない場合ではMRが営業することで薬の売り上げは伸びます。
情報取集をすること
MRが「自社製品が実際に使用されてどの程度効果が出たのか」や「副作用がどの程度出たのか」などの実臨床における使用データを収集して本社にフィードバックすることは製薬会社にとって非常に役に立っています。
本社はその収集したデータを参考にして次なる戦略を練ったり資材を作ったりします。
現場の意見は貴重なのでこのような情報を収集してフィードバックするMRの存在は会社にとって必要です。
情報提供をすること
「薬の効果の具体的な説明」や「発現する可能性がある副作用」などの薬を使用する上で知っておいて欲しいことはMRを通じて医療関係者に情報提供するのがベストです。
これはインターネットや書面(添付文書など)からでも情報提供することは可能ですが人から聞いた方がよりわかりやすいですしマンツーマンの情報提供であればその場で聞きたいことを質問することもできます。
このように人からの情報提供は有益なので製薬会社にとってMRは必要です。
医療機関がMRに期待すること
製薬会社にとってMRは必要な存在であるということを先程書きましたがはたして医療機関にとってMRはどこまで必要な存在なのでしょうか。
医師がMRに期待することは以下の通りです。
- 一般的な情報提供
- 新薬が発売した際の情報提供
- 使ったらどの程度効果が出るのか
- 副作用の発現率
- 医療連携
- 講演会の案内
- 資材の提供
- スポンサーとして役割
- 雑用要員
こんな感じです。
ただMRに何も期待していない医師も一定数います。そこでなぜMRに何も期待していないと言えるのかというと実際にMRと全く面会しない医師がいるからです。
だからMRへの期待度は正直医師によってかなりのバラツキがあります。
一般的な情報提供
薬に関する情報提供を求めている医師は一定数います。実際にその薬を処方するとなった場合医師なら効果や副作用は知っておかなければなりません。
またより良い治療をしないと患者さんが他へいってしまうので経営面からも薬を使い分ける必要があります。薬を使い分けるにはそれぞれの薬の特徴を把握しておく必要があります。
薬の特徴を知る一番手っ取り早い方法はMRに聞くことです。従って薬に関する情報提供を求めている医師は多いです。
新薬が発売した際の情報提供
新薬の情報はかなり需要があります。特に新しい作用機序の新薬の情報は医師にかなり求められます。
新薬は承認時のデータしかないので医師も開発した製薬会社に聞く以外に入手する方法がありません。
ですので新薬が発売した時はMRが必要とされるケースは多いですね。
使ったらどの程度効果が出るのか
「パンフレットには〇〇くらい効果があると書いてあるけど実際はどうなの」みたいな感じで実際に使用した際の効果に関する情報はかなり需要があります。
副作用の発現率と対処方法
副作用の発現率とその対処方法もかなり需要がある情報です。副作用の対応は医師の信頼に関わりますので医師は副作用の情報を必要としています。
医療連携
開業医の先生ならば紹介状を書くために専門医の先生とのコネクションを作りたいと思っています。
ですのでそういったケースであればMRが講演会を企画してコネクション形成の手助けをすればかなり貢献できます。
講演会の案内
講演会は一部の医師には需要があります。ただ全く興味のない医師がいらしゃるのも事実です。
医師が講演会に行く目的は薬の情報を入手する以外には地方に住んでいる先生ならば経費で東京に行くためや知り合いの先生に挨拶するためなど多岐に渡ります。
資材の提供
患者さん向け資材を持ってきて欲しいという依頼は一定数あります。また資材にも種類があるのでMRに資材に関する説明を聞きたいという要望もあります。
スポンサーとして役割
これはあまり良くないニーズです。例えばMRの忘年会の参加費がやたら高かったり説明会という名の弁当会をMRに依頼することなどです。
たまに完全に弁当目的で説明会を依頼してくる医療機関もあります。(もちろん薬の説明が聞きたいという医療機関もあります)
またたくさん使っている医師の中には「これだけ使っているのだから何か提供すべき」という考えを持っている方は一定数いますね。
ただ現状規制が厳しいので医師から「何か提供すべき」と言われても提供できる物は限られているので今となっては特別なことはできません。
接待ができる頃はこのスポンサーとしての役割が非常に強かったです。多く処方してくれたらそのお返しとして接待するみたいな感じです。
もっというと「接待するからたくさん処方してください」みたいな契約もありました。
雑用要員
忘年会の幹事などがこれにあたると思います。
中にはMRを便利屋みたいに使う医師もいます。MRとしても数字があるので断れない部分もあったりします。
特に独身のMRなんかはよく色んなことを依頼されます。
MR不要論が唱えられる背景
ここまで製薬会社と医療機関という2つの視点からMRの必要性について書いてきましたがどちらかというと製薬会社にとってMRは必要な存在であると言えます。
一方で医療機関側にとってMRが必要なケースはだんだんと減ってきていると言えます。
具体的に書くと
- 以前より画期的な新薬は出なくなっている
- 以前よりスポンサーになれなくなっている
- 情報提供が飽和している
- インターネットの進化している
こんな感じですね。
以前より画期的な新薬は出なくなっている
薬の開発が進んだ結果以前よりも画期的な新薬は出にくくなっています。新薬が出ないと医療機関側はMRをそこまで必要としません。
ちなみに既存品と似たような新薬の場合MRからの情報提供は特に求められません。
DPP4阻害薬がいい例だと思いますが1日の服薬回数だけ違ったり排泄経路が少し違うだけであとは同じみたいな場合MRから情報提供されなくても別に困りません。
以前よりスポンサーになれなくなっている
製薬会社はスポンサーとして医療機関を支えてきた一面もあります。例えば弁当の提供や高級料理店の接待などです。
このようなスポンサー業務はかなり規制されているので昔していたようなことはもうできません。
スポンサー業務ができないならMRなんていらないと考える医師も実際にいます。
情報提供が飽和している
情報提供は塗り絵と一緒で限界があります。
まだ満足いく治療ができていない領域(アンメットメディカルニーズ)に関してはほとんど色がついていない状態ですので情報提供する価値があります。
ただ治療方法がほぼ完結している領域(高血圧、脂質異常症など)はもうすでに色がほとんど塗られた状態になっています。
そのような領域ではこれ以上の情報提供はほとんどいらない(新しい情報もほぼない)のでMRは必要ないということになってしまいます。
インターネットの進化
インターネットが進化した結果欲しい情報を人に頼らなくても手に入れることができるようになりました。
またSNSも発達していますので詳しい人に直接聞くこともできるようになりました。
MRの業務全てをインターネットなどが代用できるわけではありませんが現在はインターネットなどがMRの仕事の一部を代用しています。
MRがいらないケース
製薬会社にとってMRは自社製品を宣伝する存在なのでやはり必要です。ただ医療機関側にとってMRは必要でないケースがあります。
そこで必要でないケースの具体例をあげると以下の通りです。
- 効果が良くないのにPR
- 相手の妨害
効果が良くないのにPR
明らかに自社製品が他社製品の下位互換なのにその製品をPRして採用や増量を目指す行為はただ相手に害を与えているだけです。
会社としては売り上げを伸ばすためにこのようなことをやるわけですが医療機関側にとっては得るものはありません。
むしろ治療の邪魔をしているだけです。
相手を妨害
MRは競合品の採用が決まりそうな時に掻き回すことでそれを妨害するようなことも営業の一貫としてやります。
結局のところ相手の利益よりも自分の利益を優先するわけです。
また後発品に変えた方が国にとっても薬局にとってもメリットがあるのにそれを妨害して先発品を使って欲しいとお願いするのは医療機関にとっては迷惑行為になります。
MRの人数は多すぎる
以前に比べてMRが提供できるモノは減ってきていますしMRが必要な時も減ってきているのでMRの人数は減少傾向にあります。
またコントラクトMRという存在もあるのでMRが足りなければコントラクトMRを要請すればOKです。
しかも常にたくさんのMRが必要なわけではないので自社の専属MRを減らしても問題ないわけです。
ただ会社にとって一定数のMRは必要なのでMRの数は減ると思いますがMR職がなくなることは考えにくいです。
理想は自社製品を使うことが相手のメリットになること
最後に理想を書いておきます。
それは自社製品を使用することが相手にとって一番のメリットになることです。
そんな状況であるならば積極的に自社製品を医師にPRして使って頂きましょう。
僕が実際に経験したことですが「〇〇を使ってみたら患者さんから感謝されることが多くなった」と言われたことが過去にありました。
この例では先生は〇〇をそこまで評価していなかったので〇〇を使うことをかなりためらっていました。
ただ僕は状況を分析した結果〇〇を使えば絶対に効果が出るという確信があったので粘り強く〇〇をPRしました。(このケースでは〇〇を使えばうまくいくことに先生は気づいていません)
その結果先生は渋々〇〇を使うことになりました。
そして実際に使ってみたらすごく良かったので先生は驚きつつも喜んでいました。
こんな感じで実際に使ってみたら意外といい結果がでたというケースはよくあります。もし仮にMRが薬をPRしなかったらこのような成功事例は起きません。
だから自社製品を使うことが相手にとってのベストチョイスであるならばガンガン営業していきましょう。
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