ある病院で新薬を新規採用した際の物語-PART1-




今回はある病院で僕が新規採用させた際のことについて書いていきます。

新薬を採用させるは大変なことです。

僕も新薬を採用させるにあたっていろんなことを学ぶことができました。

新薬を採用するにあたっての準備

まず新薬が発売する前にいろんなことを勉強します。疾患の勉強や競合品の勉強が知識面では必要です。

 

そして処方が多い施設の選定をしてターゲットを決めます。

 

僕は結果的にこのターゲット施設全てで採用させることができたわけですがその中でも苦戦した施設に関して今回は書いていきます。

新薬といっても意外とタイプは分かれる

新薬ってその名の通り新しい薬です。

 

そこで「すでに市場に出回っている薬と同じ作用機序の薬なのか」あるいは「全く新しい作用機序の薬なのか」によって変わってきます。

 

例外はありますが大体どの疾患にも一番評価されている作用機序の薬があります。よくいう第一選択薬です。

 

第一選択薬の中でも作用機序が同じ薬剤は何種類かあります。これらの薬剤で違うのは受容体への選択性、排泄経路、服薬回数、薬価が主なポイントとして挙げられます。

 

これらの違いから作用機序が同じでも効果、副作用、服薬コンプライアンスについて差が生じます。

 

そしてこれらの薬剤は作用機序が同じなので併用が難しくなるケースが多いです。だから競合品となるケースが多いです。

 

複数の薬剤がすでにある中に同じ作用機序の薬を発売した場合、これらの多少の違いはありますが、似ていると言えば似ているので先生からすると新薬に関しての期待度は低いということになるのが一般的です。

 

期待度は低いが新薬だから興味はあるという先生も多くいらっしゃるのも事実です。(処方するかは別として)

 

続いてもう一つの新薬のタイプについてですがこれは全く新しい作用機序の薬です。この手の薬剤の評価は高いか低いかですごく分かれます。

 

すでに出ている薬剤の評価が高い場合はなかなか違う作用機序の薬に対しての期待はありません。既存品で十分であるためです。

 

それに対してすでに出ている薬剤の評価が低い場合は違う作用機序への期待は高くなります。

 

このようにすでに出ている薬の評価次第で新薬の期待度は変わってきます。このタイプも同様に新しい作用機序だから興味があるというケースは多くあります。

僕が扱った新薬はどのタイプに属するのか

客観的に分析すると僕が扱った新薬はすでに市場に出回っている薬剤と同じ作用機序でかつ既に発売されている薬剤の評価が高い状況での発売でした。さらに別の作用機序の薬剤も評価が高く市場は飽和状態でした。

 

このように市場は飽和状態ですので発売前は「あまり売れないだろう」という意見が多かったです。

 

現実は厳しい訳です。付け入る隙があまりない市場に参入するので努力しないと全く売れないだろうと僕は発売前に思っていました。

 

加えてこの新薬を売らないと僕の連続達成が途切れてしまうのでなんとしてもこの新薬を売って連続達成を続けると静かに誓ったことを覚えています。

発売前の活動

ある病院とは僕が担当するエリアの中で一番キャパシティが大きい施設です。

 

しかし先生には数える程しか面会したことはなくて面会を希望しても今日は面会できないという日々が続きました。

 

ここで面会できないことが続いた場合に確認した方がいいことは他のメーカーは面会できているのかということです。

 

どのメーカーとも面会していないのならばその施設はMRとは面会しないという方針ということがわかるのでどんなにキャパシティが大きかったとしてもターゲットとしては相応しくありません

 

ただ面会できないという理由だけでは上司は大体納得しません。できる限り頑張れと言われます。ですので結局はターゲットとして残るのが僕の経験上あります。

 

なぜ面会できない施設をターゲットとして残すのかといつと一番の理由はキャパシティが大きいからです。

 

エリアの薬剤のシェアはキャパシティが大きい施設でないと大きくは変動しません。またキャパシティが大きい施設は波及効果も大きい施設でもあります。

 

従ってキャパシティが大きい施設のシェアを上げることができれば副次的な効果でエリアのシェアも同時に上がっていきます。

 

また面会については変化することがあります。

 

今まで全くMRは面会できなかったが、あるタイミングでMRとの面会を始めたとか、ある期間だけ面会が許可されたなどといった形でいつ面会が可能になるのかわからない訳です。

 

だからターゲットから外してしまうと完全に思考から除外してしまうことになりこのチャンスを生かせないという状況に陥ってしまうことになります。

 

面会はできなくても新しいパンフレットをコメディカルの方に渡したりしてその施設を気にかけておくことは重要だと思います。

 

常に気にかけていないと微妙な変化に気づくことができないです。

 

僕は面会できなくてもいつかはチャンスが来ると信じてひたすら通ってリサーチを続けて変化がくるのを待ちました。そしてわかったことは100%面会できないことはないということです。

 

この事実がわかったのは今日は忙しいという断り方をされてMRとは面会しないとは言われていなかったからです。

 

経験上本当に面会できない先生はメーカーとは面会しないとはっきり言います。それを毎回行っても言われないということは面会できないわけではないということになります。

 

また僕の勝手な推測ですが新薬ということで先生も少しは興味があるのだろうと思っていました。これを確信したのが講演会についての案内をした時です。

 

ちょうどいいタイミングで新薬とは関係ない講演会の案内状を先生に持って行きました。

 

今日も面会できないのだろうと思って行きましたがなんとその日に限って面会できました。

 

この日が新薬の発売前に僕が先生に面会できた唯一の日です。

 

面会を終えた僕は新薬に関しての講演会については興味があるということを確信しました。

 

新薬を発売する際には大体発売記念講演会というものが企画されます。この講演会は確実に先生に案内しなければならないと思って僕の枠を頂きました。

 

ここで問題が一つあって発売記念講演会は新薬の発売から少し時間が経った時期に企画されていたということです。だから発売してすぐに処方が開始されるということは無理だと悟りました。

発売後の活動

新薬は承認されて初めて販売することができます。もちろんデータについても承認されないと提示することはできません。

 

医薬品が流通されるまでにデータだけ解禁される期間があります。この期間が新薬を採用させる上で重要な期間です。

 

承認時のデータを活用して発売と共に採用になるように準備を進めるので本当に大切な期間です。

 

新薬のデータが解禁になっても先生に面会することはできなくてパンフレットと一言添えた名刺をいつも渡して帰るという活動が続きました。

 

この大事な期間でも想定はしていましたがこの施設に関してはほとんど何もできませんでした。

 

そして僕が待ち望んだ発売記念講演会の案内状が届きました。

 

これが最初で最後のチャンスだと思って病院に行き面会をお願いしました。結果は面会できるということで僕の予想は見事に的中しました。

 

そして新薬についての紹介と講演会にぜひ来て頂きたい旨を話してその日の面会は終了しました。

 

あとは処方が開始されるのを待つのみでしたので気長に待ちました。

 

面会した内容から採用にはおそらくなるだろうと思っていたのでそんなに焦りはありませんでした。

 

そして、無事処方が開始され新規採用となりました。僕が依頼した講演会には出席して頂けませんでしたが、講演会がなかったら面会すらできずにおそらく採用にもならなかったと思います。

まとめ

新薬の採用は大変ですが、MRであればやりがいを感じることができるのではないかと思います。僕はこの経験を通して学んだことが多くありますし、何より毎日が充実していたと思います。採用させなければならないプレッシャーは確かにありますが、それよりも採用になった時を考えるとそんなにプレッシャーには感じませんでした。




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